刊行物等提出書の通知を受け取りました。
「この特許出願が特許になるとヤバイ!本格的に特許にならないように特許庁にチクっちゃる!」
っていうのを認める制度です。
具体的には、その特許出願が本格的に特許になっちゃうと自社の製品がその特許を踏んでいるので、特許になるのを阻止したい(匿名で)という制度です。
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もし他者の特許を踏んでしまったら?
えらいことになってしまいます。
ウィキペディアによれば、
「特許権は、特許発明を独占排他的に実施できる権利である(特許法68条)。つまり自らの発明の実施を独占でき、許諾等をしていない(権限のない)第三者の実施を排除できる。そのため、このような第三者の実施に対しては、その違法な実施行為、つまり特許の侵害行為を中止させる権利(差止請求権、特許法100条)およびそのような侵害行為により発生した損害の賠償を求める権利(損害賠償請求権、民法709条)を行使することができる」
ってことです。
つまり、
・特許権を持つ特許権者は、他者のその特許技術の実施を止めさせることが出来る。
・損害賠償を請求できる。
等の強力な権利なのです。
だから、伊藤園の特許5189667をカゴメは意地になって無効にしたのです。
カゴメ 対 伊藤園のトマトジュース特許戦争の報道、ブログを見て思うこと
決して社会正義のためなどではありません。
(あ~、ぶっちゃけちゃった!)
どんな内容だったの?
「他者があなたの特許出願に文句をつけてますよ」
と言う内容を受信しただけです。
詳しくは特許庁の資料を閲覧請求してね。
とのことです。
だから!その内容は?
閲覧請求(これはこれで、今後説明しますね)すると内容を見ることが出来ました。
詳細な内容は当然、守秘義務がありますので、ここには書けませんが。
普通は、「特許出願の進歩性を否定する文献がありますよ」と言う内容、つまり、類似の出願がすでにあったよと言う内容のはずなのです。
しかし、そうではありませんでした。
「すでに、この出願人Fは特許権Zを持っている。この出願人の特許出願Aは特許権Zと実質的に同じものである」
と言う内容でした。
その中身を見て、安堵すると同時に、自分の方針が間違っていなかったことに喜びました。
安堵した理由は?
「実質的に同じ」と言いたくなるのは分かります。
まさに、そのつもりなのですから。
有効な特許権(他者が踏んでくれている特許権)が取れたら、出来るだけ類似の特許権を量産するのは常識です。
進歩性を否定(特許法第29条第2項違反)されて、しまうと今後の量産計画に支障をきたしますが、実質的に同じ(特許法39条違反)ならば回避は容易です。
だから安堵しました。
と同時に、この特許や出願を苦々しく思ってくれている人が居るということが嬉しかったです。
とはいえ、このSさんの「刊行物等提出書」は当社の特許出願Aの間違いを指摘してくれました。その間違いの指摘はありがたく受け取って特許出願Aを改良したいと思います。
方針ってなによ?
この部分は、わかりにくい文章になってしまいます。こめんなさい。
他者が踏んでくれる、いわゆる「良い特許」を取得するには、
・先進的な特許を取得する
って言うのもひとつの立派な方法ですが、一方で、
・今の技術よりもごく少しだけ進んだ技術で特許を取得する
と言う方法もあります。この場合は、世の中が先進的な技術に追いついてくるのを待つ必要が無く、特許出願を行って、それが特許権になる頃にはちょうど世の中が追いついてきます。
個人発明家がappleに勝ったのが有名です。
【速報】日本人個人発明家がアップルから3億円ゲット | 栗原潔のIT弁理士日記
個人がアップルに勝つための特許戦略(栗原潔) - 個人 - Yahoo!ニュース
それってどうやるの?
今の技術よりもごく少しだけ進んだ技術で特許を取得する
にはコツがあります。
それは、従来技術をよーく見て、さらに観点をずらして見る事です。
(抽象的でごめんなさい)
今回の例で言うと、私は、ある装飾方法に関して、ハードウェア屋さんの設計図面で記載した特許文献が無いことに気がつきました。
普通は、特許出願をする際に開発担当のハードウェア屋さんに依頼して、簡単な図面を書いてもらいます。しかし、この観点の図面は特許公開公報にないことに気がついたのです。
そこで、過去の出願を検索して、5000件以上を片っ端から確認しました。
図面を確認するだけですので、そんなに苦痛ではありません。
3日くらいで確認できました。
「確かにない。この観点では!」
と確信しました。
それで出願したんです。
どうやって増産するの?
分割出願すれば簡単に増産できます。ただし、元々同じ出願ですので、分割できる数に限りがあります。
そこで、どうしたかと言うと、
自分の手がけた出願を、社内で共有して出願のベースとして使ってもらったのです。
これで、出願の核となる部分は自然に量産されます。
さらに、実施例のバリエーションは増えます。
あとは、同僚が本来の技術で特許を取得した後に分割出願を行って、新しい出願として手がける。
これだけです。
もちろん手間はかかりますよ。
でも、同業他社がイヤがる特許を量産するって知財部員の醍醐味ですよね~。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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