前回、
で、知財部の仕事を説明してみました。
今回は、知財部の方向けの内容です。
序章
拒絶理由通知書が来たら、色々と考えますよね。
でも、名案が浮かんでも、それが審査官にちゃんと伝わらなければなりません。
結論から先に言うと
意見書は簡潔に!
言いたいことだけを書くべきです。
拒絶理由通知書のコピペなんてもってのほか!
言いたいことを駄文の中に埋もれさせてはいけません。
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それでは例示します
例は、前回の「走れメロス」の拒絶理由です。
実施例は走れメロスの全文です。
特許請求の範囲(前回そのまま)
【請求項1】
メロスは暴君ディオニス王に投獄され死刑を宣告されるが、
石工のセリヌンティウスを人質にして、なんとか妹の結婚式に出席し、
処刑されるために走ったり、ヒッチハイクしたりして帰って来たことを特徴とした走れメロス。
【請求項2】
請求項1に記載の走れメロスであって、
暴君ディオニス王は人間不信であって、メロスが帰ってこなくても石工のセリヌンティウスを処刑すれば良いと思っていた事を特徴とした走れメロス。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の走れメロスであって、
メロスは純朴な羊飼いで、いろいろ迷いながらも、ギリギリ期限内に帰ってきたことを特徴とした走れメロス。
拒絶理由通知書(前回そのまま)
①特許法第29条第2項
引用文献1)古代ギリシャの伝承とドイツの「シルレル」の詩
引用文献2)古代ギリシャのピタゴラス派の教団員の間の団結の固さを示す逸話
引用文献1と引用文献2を組み合わせれば、本願のストーリーになる。
②特許法第29条の2
引用文献3のネタは太宰くんが発案するまえの事件であって、檀一雄の『小説 太宰治』はそれを元には書かれている。
③特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)
請求項1の「ヒッチハイクしたりして」は実施例のどこにも書かれていない。
したがって請求項1は明細書にサポートされていない。
補正書の内容(特許請求の範囲のみ)
【請求項1】
メロスは暴君ディオニス王に投獄され死刑を宣告されるが、
石工のセリヌンティウスを人質にして、なんとか妹の結婚式に出席し、
純朴な羊飼いであるメロスは、処刑されるために走ったりして、ヒッチハイクしたりしてギリギリ期限内に帰って来たものの、
自分が石工のセリヌンティウスを見捨てることを迷ったことを告白し、石工のセリヌンティウスに自分を殴らせた
ことを特徴とした走れメロス。
【請求項2、3】削除
まあ、雑な例ですから、内容の稚拙さやアンダーラインの付け方についてはツッコミご容赦ください。
意見書の内容
【書類名】 意見書
【整理番号】 *****
【提出日】 平成30年 8月 9日
【あて先】 特許庁審査官 ①津島 美知子 殿
【事件の表示】
【出願番号】 特願2017-******
【特許出願人】
【識別番号】 **********
【氏名又は名称】 *********
【代表者】 ****
【発送番号】 *******
【意見の内容】
1.拒絶理由について②
審査官殿は、平成30年 *月 *日付け起案の拒絶理由通知書において、本件出願の請求項に係る発明は、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないとご指摘されました。
引用文献1:古代ギリシャの伝承とドイツの「シルレル」の詩
引用文献2:古代ギリシャのピタゴラス派の教団員の間の団結の固さを示す逸話
2.補正について③
審査官殿のご指摘に鑑み、出願人は、同日付提出の手続補正書により、本願に引用文献とは異なった
「純朴な羊飼いであるメロスは、処刑されるために走ったりして、ギリギリ期限内に帰って来たものの、」、「自分が石工のセリヌンティウスを見捨てることを迷ったことを告白し、石工のセリヌンティウスに自分を殴らせた」
という構成を付加し、差異を明確にいたしました。
また、ヒッチハイクの記載は明細書にありませんでしたので、「ヒッチハイクしたりして」の構成は削除しました。
3.補正の根拠
ここは適切に!長々と明細書の段落全部を引用する必要はありません。
必要な部分のみ。
4.補正後の本願と引用文献1、2との比較④
補正後の本願を引用文献1、2と比較すると本願には、「純朴な羊飼いであるメロスは、処刑されるために走ったりして、ギリギリ期限内に帰って来たものの、」、「自分が石工のセリヌンティウスを見捨てることを迷ったことを告白し、石工のセリヌンティウスに自分を殴らせた」と言う構成を備えております。
この構成により、純朴で一本気なメロスが、殴らせることで許しを請うという行動を通じて読者に感動を与えるという顕著な効果を奏します。
一方で、引用文献1にも引用文献2にも、主要な登場事物は気弱で人を殴ることが出来ないと記載されています。
つまり、引用文献1も2も平和的に物事を解決することが主題であり、自分の気の迷いの罪を、殴らせることで解決しようという発想は生まれないのであります。
また、引用文献3の檀一雄の『小説 太宰治』 ですが、これは、単に実話の記載であり、本願のようにフィクションではなく引用文献足りえません。
(このあたりどういうのが適切か迷います)
5.結論⑤
以上のように、補正後の本願発明はサポート要件違反を解決し、引用文献1、2とは異なる発明となりました。
このため、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号に該当しないと確信いたします。
また、引用文献3は不適切であると思料いたします。
よって再度ご審査の上、特許査定を賜りますようお願い申し上げます。
以上
意見書解説
①審査官の名前は書きましょう。
今回は仮に太宰治の妻の名前を書きました。
実際には、審査官に対して、「あなた本人を意識して書いていますよ」という無言のメッセージになります。
また、実際、こちらも、審査官の個性に合わせて補正したり、意見書を書いたりするので、ここに記入しておいたほうが絶対良いです。
②拒絶理由について
拒絶理由のコピペはNGと言っていましたが、審査官が、これを見たとき、どんなんだったかな?と思い出す助けになりますので、条文と引用文献だけは書いてもOKです。
でも、審査官が意見書を読む場面を想定してください。
審査官は、かならず、
本願明細書
意見書
補正書
自分の書いた拒絶理由通知書
をパソコンのモニターの上に開いています。
だから、意見書を読んでいて本題がなかなか出てこないと集中力が次第に途切れてしまいます。
だから、本題を探させてはいけないのです。
③補正について
補正についてと言いながら、ここで、ズバッと本題を露出しているのです。
これは大事です。
内容が良ければ、審査官はこれだけで理解してくれます。
また、すでに審査官は補正書をパソコンのモニターで開いているのです。
補正後の特許請求の範囲をここで引用するのは無駄です。
(審査官に対するノイズでしかありません)
④補正後の本願と引用文献1、2との比較
当然ここが大事ですよね。
でも冗長にならないようズバッと斬り込んでください。
しつこいと印象がボヤけます。
⑤結論
ここは定型文で十分です。お好きなように・・・。
関連リンク
私がこういうフォーマットに落ち着いた理由としては、
併せてどうぞお読みください!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。<(_ _)>
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