特許庁からの書類の中に「先願未請求による審査不可能通知書」というものがあります。
例えば、こんな内容です。
「この出願の発明は、同日に出願された下記の出願の発明と同一と認められますが、下記の出願について出願審査の請求がされていませんので、特許法第39条第6項の規定による協議を命ずることができず、この出願について審査を進めることができません」
簡単に説明すると、
・審査請求された発明と同じ発明が同日に出願されていた。
・もう一方の方も審査請求されていれば、特許庁から両方の出願人に対して協議するように促すことができるが、残念ながらもう一方は審査請求されていないのでそれもできない。
・だから、審査請求はされたけど、審査を進めることができない。
という意味です。
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弊社にも来ましたので調査してみました
「先願未請求による審査不可能通知書」をもらった案件を検索してみました。
そしたら、出てくる出てくる。
特許で有名どころの企業の案件が目白押しです。
例えばキャノンとかはとっても有名です。
サンプルとして2つご紹介します
出願人が興味深い例
アイリスオーヤマは家電分野では後発です。
シャープを退職した技術者を積極的に雇用し、家電分野に食い込もうとしています。
①特願2016-173850に「先願未請求による審査不可能通知書」が出ていました。
同じ発明だと言われたのは②特許2016-164307です。
実は、①特願2016-173850は②特許2016-164307の分割出願だったのです。
そして、①特願2016-173850の請求項1~4が②特許2016-164307の請求項8~11と同一だと指摘を受けています。
親の出願の一部を分割出願にして、親の出願をそのままにしていたのがバレちゃったみたいです。
わざとかうっかりかはわかりませんが、特許庁は親子関係の出願はちゃんとチェックしていることが伺えます。
発明の内容は、炊飯器に重量検知をさせるものです。
特許・実用新案照会(固定アドレス)(結果一覧)|J-PlatPat
しかし、発明の効果は「操作性を向上させた上下分離型の炊飯器を提供することができる」です。自動計量機能ではありません。
変わった特許のとり方ですね。
もしかして、自動計量機能自体は公知なので、その周辺を押さえる、いわゆる応用発明というものかもしれません。
後発メーカーの王道ですね。
技術的に興味深い例
自動車のヘッドライトカバーは樹脂でできているので、古くなると紫外線によって劣化して濁ってきます。
私も古いクルマに乗っていたので気になっていました。
それを解決する発明です。技術的に興味があったので見てしまいました。
特許・実用新案照会(固定アドレス)(結果一覧)|J-PlatPat
これも、③特願2015-103157と④特願2016-051442が親子関係でした。
まず、拒絶理由通知書が発送され、うっかりミスを指摘されます(特許法36条違反)。
それを補正して解決したら、「先願未請求による審査不可能通知書」を貰って、親願と同じだよって指摘を受けました。
特許庁も同時に指摘してあげればいいのに。
なお、この案件は早期審査という制度を使っていますので、急いでいたと思われます。
先願未請求による審査不可能通知書をもらったらどうするのか?
サンプルとしてご紹介した2つとも、先願(実際は同日出願)は自分の出願ですので、審査請求をしていない方の先願を補正しています(上申書なし)。
そのうえで、審査中の「先願未請求による審査不可能通知書」を貰った案件の方で上申書を提出し、「先願の方を補正したので、同一の発明ではありません」と主張しています。
まとめ/先願未請求による審査不可能通知書は頑張っている知財の勲章か?
「先願未請求による審査不可能通知書」をもらう場合を想定すると
1.分割出願して、うっかり補正を忘れた。
2.類似の出願を行って一部審査請求したが、結局特許庁に同じ発明だと認定されてしまった。
くらいじゃないかなぁ。
どちらも、戦略があってやっていることです。
1.はもとの出願を温存しておいて、より良い権利を取りたい。
2.は核となる技術をぐるっと取り囲んだ権利が欲しい。
っていう目的があるのではないかと思われます。
ウッカリでは、あまり勲章とは言えませんが、戦略的に取り組まなければこのような指摘を受けることはないので、同業他社から見れば、「先願未請求による審査不可能通知書」を貰っている会社もしくは代理人には要注意というところでしょうか?
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。<(_ _)>
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